朦朧太郎さん
昔々ばあちゃんが川に洗濯に行きました。じいちゃんも魚釣りに付いて行きました。「下着汁で泳いでいた魚なんか食べたくないわよ」と言って、ばあちゃんはじいちゃんを上流の方に行かせました。
じいちゃんは楽しく魚釣りをしていると漠然と桃色のものが川の中で浮かんでいるのが見えました。二回も三回目ばたきしましたが、まだそのものが見えていました。だけじゃなくて、それからはじいちゃんがどこへ行っても、そのものが付いて回りました。何となくじいちゃんは新しい友達ができたような気がするようになりました。
としていると、じいちゃんはばあちゃんの声が聞こえてきました。「洗濯終わって、もう帰るよ。」 ということでした。
「俺たちも付いて帰るよ」とじいちゃんが返事しました。
「俺たち?」とばあちゃんが尋ねました。
「うん、あの桃色のやつがどこにでも付いて回るよ。」
「付いて回るって?何も見えないわよ。」
「いるんじゃない!こっちに。ほら、あっちに行った。」 と、じいちゃんはばあちゃんの方に振り向きました。
すると、ばあちゃんは「お目に何が付いているの?」と聞きました。
「何も付いてなんかいねぇ」とじいちゃんはじいちゃんらしく虫の居所が悪くなりかかっていました。
数十年じいちゃんの傍に居るばあちゃんは虫を無視して、じいちゃんの眉毛にくっついていた羽を落としてから二人だけで家に帰りました。